投稿日時: 2025/12/12 6:11
タイトル: (城内議員) ただ今から「経済財政諮問会議」を開催する。
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(城内議員) ただ今から「経済財政諮問会議」を開催する。 〇「令和8年度予算編成の基本方針等」 (城内議員) 本日の議題は、お手元の議事次第のとおりである。議題1は、「令和8 年度予算編成の基本方針等」である。 まず、前回の会議において、今般の経済対策の評価についてご議論があったことの関 連として、若田部議員から、消費者物価の動向と経済対策の効果について、資料1に沿 って、ご説明をお願いする。 (若田部議員) お手元の資料1ページをご覧いただく。 今般の経済対策をめぐる論点の一つとして、この対策によってインフレが加速するの ではないかという声があることは承知している。そこで、物価と経済対策の関係につい て、資料1のとおり内閣府に整理させたので紹介したい。 まず1ページ目、図1は消費者物価の上昇要因を見たものである。最近の物価上昇 は、緑色の食料の寄与が大きく、他方で、基調的な物価動向を示す赤線の食料やエネル ギーを除いた物価を見ると、物価安定の目標である2%を下回る伸び率で推移してい る。こうした現状を出発点として考えていくことが重要であると考える。 その上で、今回の物価高対応は、食料品をターゲットに家計を支援する重点支援地方 交付金を措置した。加えて、ガソリンや電気・ガスといったエネルギーの価格抑制も実 施している。図2のとおり、これにより消費者物価を通年でマイナス0.3%ポイント程 度、月によってはそれ以上押し下げる見込みである。 2ページ、基調的な物価への影響を考えたいと思う。図3のとおり、今回の対策のG DP押し上げ効果は24兆円程度と見込まれるが、需給バランスへの追加的な影響を考え るには前年度との対比が重要になる。それを見ると、今回の対策は前年度から実質GD P比0.5%ポイント程度拡大させるものと考えられる。 図4のとおり、GDPギャップは足元でゼロ近傍だが、この追加的な対策効果が今後 2~3年で徐々に発現すると仮定すれば、GDPギャップを年0.17~0.25%ポイント程 度押し上げる計算となる。このため、急激な需給バランスの変化をもたらすものではな いということである。 こうした追加的なGDPの押し上げ効果が物価に与える影響を、図5で示した近年の GDPギャップと物価上昇率の関係から推察すると、食料・エネルギーを除いたいわゆ る基調的な物価への影響はプラス0.2~0.3%ポイント程度、さらに消費者物価(総合) への影響はプラス0.1~0.2%ポイント程度という結果になる。もちろん実際の経済では 様々な要因で価格変動が生じることに留意が必要だが、以上の分析や今回の個別物価対 策の物価押し下げ効果を踏まえれば、今回の経済対策がインフレを加速させる影響は限 定的と見込まれる。 (城内議員) 続いて、永濱議員から関連のご発言をいただく。 (永濱議員) 物価動向と経済対策の効果について、今、若田部議員からご説明いただ いた需給面を通じた影響以外にも、為替とか原油価格などの外的な要因が考えられる。 例えば、昨日までの12月平均のドバイの原油先物価格とドル・円レートの前年比を計算 すると、原油価格が前年から23.9%下落している。一方、ドル・円レートは8.5%円安と なっている。 3 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 この結果を基に、内閣府のマクロ経済モデルの乗数を基に民間消費デフレーターへの 1年分の影響を計算すると、原油価格の要因で0.26%押し下げ、円安で0.13%押し上げ なので、トータルでマイナス0.13%押し下げになる。ということからすると、今後、急 速な原油高や円安が進まなければ、外的要因を通じてもインフレの加速は考えにくいと 計算される。 (城内議員) 続いて、令和8年度予算編成の基本方針について、資料2にあるように 総理から諮問をいただいている。与党との調整も踏まえた取りまとめ案について、内閣 府から資料3に沿って説明をお願いする。 (堤統括官) 資料3、2ページをご覧いただく。前回からの変更点についてご説明す る。最初のパラグラフの5行目にあるが、「歳出の質を高める行財政改革」という文言 が追加されている。 その下のパラグラフに、3行目、「マーケットからの信認を確保する」との文言を追 加している。 併せて、③のパラグラフ全体を追加している。 次に、「2.令和8年度予算編成の考え方」であるが、①の一番下の行、「⑤の観点 も踏まえて歳出構造の平時化に配意しつつ取組を進める」との文言を追加している。 続いて、3ページ③、社会保障について、1行目の最後に「国民のいのちと暮らしを 守り、安心して医療・介護・福祉サービスを受けられる体制を整備していく」と追記し ている。 その2行下に、現役世代の保険料についても追記している。 その下のパラグラフ、3行目にある「社会保障改革の新たなステージにふさわしい予 算編成とする」との文言も追記している。 (城内議員) それでは、「予算編成の基本方針」の答申案について特段のご発言があ ればお願いする。特にご発言はないということでよろしいか。 「令和8年度予算編成の基本方針」について、お手元の案を経済財政諮問会議として 答申することを決定したいが、よろしいか。 (「異議なし」と声あり) (城内議員) それでは、本案を答申として決定する。予算編成の基本方針は、次の定 例閣議で決定する予定である。 〇「来年度予算に向けた課題②」 (城内議員) 次に、議題2「来年度予算に向けた課題②」である。議題2では、上野 厚生労働大臣にご参加いただく。 まず、筒井議員から、資料4の民間議員のご提案をご説明いただく。 (筒井議員) 資料4、1ページの前文の3パラグラフ目、高市内閣の使命として、人 口減少・少子高齢化を乗り切ることのできる、公正・公平で持続可能な全世代型社会保 障を構築し、全ての世代が安心できるようにするため、社会保障改革の新たなステージ に向けて、来年度予算編成等に取り組むべきだとしている。 4パラグラフ目、まずは、当面の対応が急がれる課題については早急に結論を得るこ とが不可欠である。同時に、中ほどのとおり、社会保障の給付と負担の将来見通しを改 4 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 めて示し、所得・資産や税・社会保障情報の管理といった制度インフラの整備を進めな がら、給付付き税額控除の制度設計や給付と負担の在り方などについて、国民的な議論 を行う重要性を指摘している。 以下、本ペーパーに掲げた四つの柱について、簡潔にご紹介する。 第一の柱として、来年度予算編成に当たり、診療報酬改定や医療・介護制度改革につ いて、インフレ下における医療・介護給付の在り方と現役世代の保険料負担抑制の整合 性確保を求めている。 2ページ(2)、第二の柱として、豊かで幸せを実感できる成長経済・成長社会にふ さわしい社会保障制度への再設計を掲げた。具体的な提案として、医療・介護分野での 様々なDX推進を通じた、効率的で質の高い医療・介護の実現、「攻めの予防医療」と いった計六点を述べている。 3ページの中段、第三の柱として、税・社会保障一体改革に向けて、給付と負担の 「見える化」と給付付き税額控除の検討に向けた視点や課題を提起している。 最後に、第四の柱、今後の社会保障改革に当たって、マクロ経済全体から見た観点の 重要性を述べている。 (城内議員) 次に、社会保障分野における今後の対応について、上野厚生労働大臣か ら資料6に沿ってご説明いただく。 (上野臨時議員) 資料6の1ページ目、上の箱のところであるが、社会保障に関する 当面の課題として、まず令和6年度の報酬改定以降、物価上昇による費用増、人材不足 等により、医療機関・介護事業者等は大変厳しい経営環境に直面している。また、他産 業との比較において賃上げ余力が小さいとの指摘もある。 そのため、令和7年度総合経済対策においては、医療・介護等支援パッケージを取り まとめ、補正予算案に1.4兆円規模で、経営の改善、従事者の処遇改善を実施するための 措置を盛り込んでいる。 さらに、次期報酬改定においては、令和7年度補正予算案の対応や物価上昇・賃金動 向を踏まえ、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながる的確 な対応を行っていく。 2ページ目、高齢化がさらに進行する中で、社会保険料負担については今後も増加す ることが見込まれている。賃上げ努力もなされる中、政党間の合意や総理指示、令和5 年12月の「改革工程」などを踏まえ、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し、金融 所得の反映などの応能負担の徹底等をはじめとする医療保険制度・介護保険制度改革に 取り組む。現役世代を中心に、できる限り社会保険料負担を抑制できるよう、その具体 的な内容について議論を進めていく。 3ページ目、中長期的な課題として、2040年頃には高齢者人口がピークを迎え、特に 85歳以上の介護・医療ニーズを抱える方や単身世帯が増加をする一方で、生産年齢人口 は減少し、医療・介護・福祉の担い手確保が一層の課題となる。こうした将来を見据 え、持続可能で全世代型の社会保障を構築するとともに、地域の実情に応じて医療・介 護・福祉分野で包括的に地域を支える体制を構築することが必要である。 そのため、現場の省力化等を推進し、ケアの質と量の拡大を図りつつ、他産業と遜色 のない処遇改善を計画的に図っていくとともに、本日成立をさせていただいた医療法改 正にも盛り込まれている地域医療構想や医師偏在対策、医療DXの推進、また、人口減 少・サービス需要の変化に応じた介護提供体制の構築、「攻めの予防医療」等の推進、 5 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 創薬力の強化とイノベーションの推進等に着実に取り組んでいく。 (城内議員) それでは、意見交換に移らせていただく。民間議員からご意見をいただ く。 (永濱議員) 私は、社会保障改革の新たなステージに向けて最も重要な視点は、供給 力強化と整合的な社会保障効率化の在り方だと考えている。このため、いかに働く意欲 を削がないかということを重視すべきだと考えている。特に、応能負担が行き過ぎる と、低所得者にとどまる誘因が生じて、働き損になってしまうということがあるため、 こうした観点からも、将来の医療費の一律3割負担化のようなところに向けた動きが高 齢者就労を促す観点でも意義があると考えている。 それから、診療報酬などの公定価格は、やはりインフレ調整を認めることも重要なの で、医療従事者の賃上げに結びつくような仕掛けが、何がしか不可欠だと思う。 こうした点も踏まえると、過剰需要の抑制や提供体制の効率化といった観点でも、や はり将来的な75歳以上の一律3割化や、リフィル処方箋などの効率化策が重要だと思 う。 一方で、高市政権の高圧経済政策というのは、労働需給の逼迫を通じて、労働集約的 な医療や介護の分野からの人材流出を招く可能性もあると思うので、こうした面でも社 会保障の効率化が、より求められることになる。要は、金だけではなくて、人や供給体 制の問題の解消の観点においても、社会保障効率化は必要だと思う。 そうした意味では、先ほど筒井議員からもあったが、医療・介護の効率化や提供体制 維持のために、AIとかロボットなどのテクノロジーも重要な役割になるので、こちら については成長戦略会議などとの紐づけや関係強化などを通じて、将来の社会保障の在 り方や姿を示すことも重要になると考える。 他方で、給付付き税額控除だが、国税、地方税、社会保険料それぞれの家計の状況を 包括的に踏まえた上で、特に社会保険料による逆進性緩和を重視したものにすべきだと 思う。また、社会保険料の負担増がいわゆる「年収の壁」による働き控え問題の最大の ボトルネックとなっているので、これによる手取りの急変を平準化すべきだと思う。 それから、私が個人的に思うのが、高市政権になって変わったこととして、財務省に は財政や制度の持続可能性だけではなく成長志向が求められるようになったと思う。そ ういう意味では、厚労省にも財政や制度の持続可能性だけではなくて成長志向が求めら れるべきではないかと考える。 また、社会保障改革をはじめ全般を通じて、制度化されている応能負担の原則や所得 制限というのは働き控えを促す側面がある。こうなった背景には、これまで国税を管轄 する財務省、地方税を管轄する総務省、社会保険料を管轄する厚労省が、ばらばらにな って制度設計してきたという現状があるのではないかと思う。今後は、税や社会保障、 給付などの制度を包括的に現状分析した上で、制度側の目線ではなく、所得に応じた手 取りなどの断層が発生しないように、家計側の目線で制度設計を行っていくべきだと思 う。 (南場議員) 来年度予算編成で、社会保障改革の新たなステージに向けて確実な一歩 を踏み出すべき。言うまでもなく、社会保障は国民の安心を支える大事な基盤だが、現 役世代の負担は既に限界に近く、改革をこれ以上先送りする余裕はない。社会保障は経 済と表裏一体であり、経済あっての社会保障という原則の下、成長する経済にふさわし い制度、産業構造にアップデートする必要がある。 6 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 改革の試金石は次期診療報酬改定だ。物価上昇や賃上げの動きをきちんと踏まえるの は当然としても、対応が必要となる費用構造は施設類型ごとに異なるため、データに基 づく客観的な評価を徹底して、医療の質や現場の生産性を高める方向で、診療報酬の配 分、算定ともにメリハリをつけていくべき。 制度改革も待ったなしだ。制度の効率化や生産性の向上を進め、単純に給付を減らす か負担を増やすかという二項対立の議論ではなく、テクノロジーや新しい仕組みを取り 入れた制度改革が必要。 その一つが選定療養制度の拡充だ。手術支援ロボットやAIを搭載した診断支援機器 の利用など、現行の診療報酬上は十分な対応が難しい新しい医療サービスを評価する仕 組みが整えば、イノベーションが医療現場に届きやすくなり、医療の生産性向上、医療 機関の経営基盤の強化にもつながる。ぜひ具体的な検討を進めていただきたい。 また、がんなど深刻な領域で起きているドラッグラグやドラッグロスも患者の立場に なると切迫した重要な問題だ。現在、政府でもその解消に向けた取組が進められている が、安心して生活、療養できる環境を維持していくためにも、薬価決定プロセスの改善 を含め早急な対応を期待する。 また、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し、高額療養費制度の見直し、介護の 2割負担の範囲の拡大、ケアマネジメントの利用者負担の導入といった積年の課題も、 どうか先送りすることなく、また、高齢者1人当たり医療費がおおむね5歳若返ってい ることも踏まえ、年齢で区切られている様々な制度の年齢の閾値を見直していくべき。 私はかねてから張り切って挑戦する人や企業が報われる経済構造への転換が必要だと 申し上げているが、その挑戦を支えるのが社会保障制度だ。安心が挑戦を生み、挑戦が 成長を作るという循環を実現すべく、ぜひ社会保障改革の実行をお願いしたい。 (若田部議員) まず、社会保障を論じる大前提として、現役世代、とりわけ子育て世 代や中・低所得者層では負担感と将来不安が高まっているという認識を共有したいと考 える。 その背景には、第一に、国民からは、どれだけ負担して、将来どれだけ給付を受けら れるのかが見えにくいこと、第二に、経済の根幹である経済成長と税・社会保障をそれ ぞれ別々に議論してきたことという二点があると考えている。ここを改善し、経済成 長、税・社会保障の三位一体的理解とデータに基づく制度設計に踏み込むことが不可欠 である。 今後の改革を進める上で最初に取り組むべきことは、年金・医療・介護などの給付の 将来パスと、それを支える税・社会保険・自己負担の将来パスを一体として示すこと だ。その際に重要なのは、マクロの合計額だけではなく、単身、子育て世帯、高齢世帯 といった世帯類型別に、生涯を通じてどのくらい負担し、どのくらい給付を受けるのか を分かりやすく「見える化」することである。 その上で、給付付き税額控除について申し上げる。これは、日本の再分配制度、社会 保障制度の一つのオプションというわけではなく、国家規模でのプロジェクトとして位 置づけるべきだと考える。給付付き税額控除は、中・低所得者層の可処分所得の下支 え、「年収の壁」の解消や就労インセンティブの改善といった課題を扱うものであり、 これをスローガンにとどめず実現するためには、データとエビデンスに基づいて設計す ることが前提になる。 給付付き税額控除を本当に機能させるためには、所得・資産、税、社会保険料、各種 7 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 給付を一体的・横断的に把握できる情報基盤と徴収インフラが不可欠になる。つまり、 給付付き税額控除は制度そのもの以上に、それを支えるインフラ整備こそが大事業であ り、時間もコストもかかる。だからこそ、今からインフラ整備に着手する判断が重要と 考える。 このインフラが整えば、誰がどれだけ負担し、どれだけ給付を受けているのか、制度 改正でどの層の可処分所得がどの程度変わるのかを定量的に検証できるようになる。さ らに、今回の経済対策では一律の給付は行わなかったが、こうしたインフラがあれば、 将来的には再分配のインフラとして活用することができる。すなわち、公平に国民に給 付を届けるプッシュ型の仕組みともなり、国民の将来への不安を和らげ、安心を支える 土台になることが期待される。 もう一つ強調したいのは、マクロ構造である。個々の制度ごとの給付、負担水準の議 論だけでなく、国・地方に加え、年金・医療・介護を担う社会保障基金を含めた一般政 府の部門別フローをセットで見る必要がある。これについては、資料5の4ページをご 覧いただきたい。 現状においては、社会保障基金は黒字、国と地方の合計は景気や地域インフラを支え ながら赤字という構図が続いている。これは経済学の初歩の知識を復習するようで恐縮 だが、マクロ経済全体で見ると、投資は貯蓄に必ず等しくなる。しかも、投資できる分 しか貯蓄もできない。政府も全体として見ると、片方で貯蓄を積み上げながら、他方で 赤字を通じて需要を支えるという形が現状である。 その上で、制度間、世代間、世代内の負担と給付の公平性、家計の消費投資を通じた マクロ経済の安定と成長、財政全体の持続可能性を三位一体で満たす設計になっている かをデータで検証していく必要がある。 ここで重要なのは、永濱議員及び南場議員からもお話があったように、経済成長のシ ナリオを基礎とした上に、税と社会保障の負担と給付のバランスをそのシナリオの中に 乗せていくという発想を共有することである。給付付き税額控除も、この三位一体のフ レームの中でどの層の可処分所得をどの程度押し上げ、それがマクロの需要成長とどう 結びつくのかまで含めて設計していく必要があると考える。 (筒井議員) 私からは、社会保障改革の新たなステージに向けて、今後設置される国 民会議の議論にも期待をしている。それを念頭に置いて三点申し上げる。 第一に、先ほど申し上げた給付と負担の「見える化」の重要性である。中長期及び全 体最適の観点から、年金・医療・介護における給付と負担の全体像を「見える化」すべ きである。全体像を「見える化」することで、制度への安心につながるということもあ る。そして、国民的な共通理解を醸成することが極めて重要である。具体的には、政府 が2018年5月に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」を、人口推計、経 済前提、さらに将来の就業者数の見通し、直近の制度改正等を織り込んでアップデート すべきだと考える。 第二に、一体改革を進める前提条件としての税と社会保険料と給付とを横断的に把握 できる情報基盤の整備である。マイナンバーやクラウド技術等を活用して、所得や資 産、サービスの利用実態などを国と地方の間、府省間でのデータ連携を促進すべきであ る。これによって、必要な方への迅速で正確な給付を実現すること。これは公正・公平 な仕組みの構築、また高市総理が目指す給付付き税額控除の制度設計を考える上で極め て重要である。また、預貯金口座へのマイナンバー付番も不可避であると考える。 8 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 第三に、医療・介護分野でのサービス提供体制の持続可能性確保。これは各議員がお っしゃったところである。例えば介護分野でいくと、サービス提供を支える従事者、介 護保険行政を担う市町村の人材、共にますます確保が困難になっていることを痛感して いる。限られた人材を有効活用して、利用者が必要な時に必要なサービスを受けられる 体制を将来にわたって維持できるよう、介護産業において、1つは処遇改善の対応、こ れと併せて生産性向上を強力に推進しつつ、構造転換も図っていくことが不可欠であ る。 そのためには、これも各議員がおっしゃった、ICT、AI、ロボットの活用を後押 しするとともに、経営の共同化とか大規模化を通じたスケールメリットの発揮を促すこ とにも取り組む必要があると考える。 また、介護保険運営について、現行の市町村の枠を超えた、より広域的な対応も今後 の検討課題ではないかと思う。事務処理やルールの全国的な標準化も進めるべきであ る。 このほか、提供体制の持続可能性の観点から、介護事業者の収益機会を広げる、経営 効率の向上や処遇改善の原資獲得につなげる取組も有効と考えられる。公定価格に基づ く保険内サービスだけでなく、利用者の多様なサービスのニーズに応えつつ、利便性向 上にも資する保険外サービスを一層活用できるよう、柔軟な運用を認めるべきであると 考えている。 (城内議員) 続いて、閣僚からのご発言をお願いする。 (赤澤議員) 人口減少や少子高齢化といった構造的要因に直面する我が国において、 現状維持ではなく、「稼ぐ力」強化と賃上げの好循環を実現していくためには、価格転 嫁・取引適正化の徹底に加えて、生産性向上・省力化投資の支援などの取組も通じ、物 価上昇を上回る賃上げを実現させることが重要である。 その上で、賃上げをしても可処分所得が増えない、賃上げの成果が損なわれるといっ たことのないように、社会保障改革において可処分所得を増加させるべく、経済産業省 としても真摯な努力をしていく必要があると考えている。 具体的には、従業員への健康投資を促す健康経営の拡大を通じた予防・健康づくりの 強化、仕事と介護の両立支援の促進による社会保障の担い手の確保、DXの推進を通じ た医療・介護提供体制の効率化について、厚生労働省と連携して取り組んでいく。 これらの取組も含め、先般閣議決定した総合経済対策を着実に実行し、日本経済の供 給力を高めながら、「強い経済」の実現に全力で取り組んでいく。 (片山議員) 社会保障分野においては、現役世代の負担抑制や能力に応じた負担への 見直しなどの観点から、前例にとらわれず不断の改革に取り組んでいく必要がある。特 に、令和8年度予算編成に当たっては、社会保障改革の新たなステージにふさわしい予 算、診療報酬改定、制度改革としなければならない。当面の対応が急がれる課題につい て、関係省庁との検討を加速していく。 具体的には、保険料負担の抑制と経済・物価動向等の適切な反映を両立させるため、 診療報酬改定においては、データに基づき、経営の改善や処遇改善につながる的確な対 応を行いつつ、保険料負担軽減のため、外来医療や調剤報酬の適正化に取り組むととも に、与党において議論が深められている「OTC類似薬を含めた薬剤自己負担の見直 し」や、「改革工程」に記載された「高額療養費の見直し」、「介護保険制度改革」と いった改革を実現し、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指 9 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 す。 これらの課題について、厚生労働省をはじめ関係省庁との連携の下、年末までに結論 を得て、社会保障改革の取組をしっかり前に進めていく。 (城内議員) プレスに入室いただく。 (報道関係者入室) (城内議員) 総理から締めくくり発言をお願いする。 (高市議長) 本日の会議では、まず、「予算編成の基本方針」の答申をいただいた。 令和8年度予算編成については、「責任ある積極財政」の考え方の下、令和7年度補 正予算と一体となって編成する。併せて、「強い経済」の構築に向けた重要施策へ重点 化しつつ、歳出・歳入両面の改革を推進し、マーケットからの信認を確保していく。片 山大臣におかれては、本答申に基づき、来年度予算編成に取り組んでください。 次に、来年度予算に向けた課題として、社会保障分野について意見交換を行った。民 間議員の皆様からは、医療・介護分野へのICT、AI、ロボットなどテクノロジーの 導入を促進すること、また、社会保障改革の新たなステージに向けて、来年度予算編 成、診療報酬改定、制度改正に前例にとらわれずに取り組むこと、当面の対応が急がれ る課題として、インフレ下における医療・介護給付の在り方と現役世代の保険料負担抑 制の整合性を確保すること、また、社会保障制度を豊かで幸せを実感できる成長経済・ 成長社会にふさわしいものへと再設計すること、給付と負担の将来推計を示すとともに 世帯類型別にわかりやすく「見える化」すること、経済全体の中で財政を把握する観点 から、国・地方に加えて社会保障基金を含めた一般政府の部門別フローを示すことが重 要といったご提案をいただいた。 まず、上野大臣、片山大臣におかれては、次期診療報酬改定等において、保険料負担 の抑制努力を継続しつつ、賃上げ、物価高を適切に反映させ、経営の改善や現場で働く 幅広い方々の賃上げに確実につながる的確な対応を行うこと。そして、持続可能な社会 保障制度のための改革を実行し、現役世代の保険料を抑えていくため、あくまでも慢性 疾患や低所得の方等の負担に配慮しつつ、「改革工程」に掲げられたOTC類似薬を含 む薬剤自己負担や、金融所得の反映などの応能負担の徹底等に関する具体的な制度設計 を行い、高額療養費制度や介護の利用者負担を見直す、といった当面の対応が急がれる 課題については、年末までに結論を得た上で、来年度予算編成や制度改正に反映させて ください。 また、すべての世代が安心できる社会保障制度を構築し、それを次の世代に引き継い でいく。こうした取組が、今を生きる私たちが将来世代に対して果たすべき責任だと考 えている。 このため、城内大臣を中心に、関係大臣が連携して、本日の議論も踏まえて、給付と負 担の在り方などについて、すべての世代を通じて納得感が得られる社会保障制度の構築 に向けた国民的な議論を着実に進めてください。 (城内議員) プレスはご退室をお願いする。 (報道関係者退室) 10 令和 7 年第 14 回経済財政諮問会議 (城内議員) 以上をもって本日の会議を終了する。 (以 上)